麗しき星の花

 リィはカエルが苦手である。

 正確には、カエルみたいなものが苦手である。

 過去、星を巡る旅をしていた頃に、巨大アマガエル(もどき)に攫われ、ヌメヌメする巨大な舌で、ベロンベロン全身を舐められまくった嫌な思い出があるのだ。あれはシンも嫌だった。そう、もちろん、シンも一緒に攫われている。当然、ほぼシンのせいで攫われたのだ。

「だから、良く分からない巣にもぐりこんじゃだめって、言ったのに……」とリィがぐすん、ぐすんと泣き、「ごめん、ほんとごめん」とシンが謝る。そしてまた同じことを繰り返す。

 何故学習しなかったのだろう、過去の自分。とシンは今現在は反省している。

 そんな双子の前に差し出される過去の残像(小さな妹の太陽の笑顔付き)。

「……ありがとな、シルヴィ。でもカエルは水場にいる方が元気が出るんだぞ。元いた場所に戻してきてやれよ」

「そうなのか?」

「ああ。カエルもそう言ってんじゃないか?」

「……はにゃー、そんな気がするだ」

 アマガエルをじいっと見つめたシルヴィはそう言って頷き、シンの言うとおりに元の場所に戻しに走っていった。

「……シルヴィは、いい子だね」

「そうだな」

 大きく息をつくリィの頭をポンポン叩いて、シンも同意する。

 そもそも、リィは竜も苦手だ。言わずもがな、九頭の竜に殺されかけたからである。

 シルヴィを妹にすると両親から言われたときは衝撃だった。

 シンだって気持ちの整理をつけるのに、妹と手を繋いで一晩寝なければならないくらい衝撃を受けたわけだが、それ以上にリィは複雑だったのではないかと思う。

 けれども、シルヴィを見るリィの翡翠色の目は優しく、穏やかだ。

(……大丈夫、だな)

 そんなリィを見るシンの深海色の目も穏やかだ。