麗しき星の花

「おや」

 と、声をかけられてしまった。

「リィは眠ってしまったのですか」

 シンの背中に背負われたリィに視線を落とすヴァンガード。

「あ、ああ、うん、リィも疲れてるんだ」

 シンは顔を引きつらせながら言った。

「……シンもお疲れのようですね。女王との契約は若い身体には負担のはず。私が運びましょうか?」

 あまり顔色の良くないシンに、ヴァンガードは眉を潜める。

 さらりと言われてしまったのでシンは気づいていないが、ヴァンガードは“女王と契約を交わした”ことに気づいている。彼には子どもたちの行動などお見通しなのだ。

「いや、いいっ。護るべきものがあるときは絶対に最後まで倒れねぇ。だから問題ないっ」

「……そうですか」

 キッとした深海色の瞳を見るヴァンガードは、懐かしそうに目を細めた。意思の強い真っ直ぐな瞳は、彼の父親そっくりだった。

 そして、彼の背で眠るハニーブラウンの髪の少女は、母親にそっくりだ。

 ヴァンガードはそっと、リィの頭を撫でる。

 あまりにも優しいその目とその手に、シンは身体を半回転させ、ヴァンガードからリィを引き離した。シンも、ルドルフとは違った意味で彼のことが苦手だった。

 ヴァンガードの黒いローブが冷風でひらりと揺れ、大腿につけられたサイホルスターが覗いた。収められているのはリィの獲物と同じ、拳銃型の魔銃だ。現在は『魔銃』としては機能せず、ただの拳銃となっているが。

 黒光りするそれを睨むように見つめてから、シンは歩き出す。

「父さんにはここで会ったこと内緒だからな!」

「ええ、分かりました。頑張ってくださいね」

 溜息を零しながらも笑顔で見送るヴァンガードは、広い石造りの階段を下りていく子どもたちに向かってヒラヒラと手を振った。