麗しき星の花

 シンの願いを叶えてやるためには、勇者であるフェイレイにこのことが知れると不味いのだ。彼らが父に勝つためには、一瞬の隙をつくくらいしかないのだから。

「それでも、です。今は特に信用ある者と行動を共にしていただきたいのです。……お解りになりますね、ルドルフ皇太子殿下?」

「……き、気を付けよう」

 一度気を抜いてしまった後の、ふいの静かな笑顔攻撃に、ルドルフは敗北感を味わった。

 彼はこの護衛官が少し苦手だ。

 どこまでも穏やかで静かな微笑みなのに、肌をビリビリ突き刺すような威圧感がある。それが時々、彼に母の──皇后ローズマリーの影を見せる。

 自分も母の怖い微笑みを受け継いでいることには気づかずに、護衛官の母に似た笑顔に怯える皇太子なのだった。


「解っていただけたのでしたら早くお戻りください。私室にお茶をご用意いたしますから、ティータイムと午睡をお楽しみください。うっかり寝過ごしてしまって連絡が遅れたとしても、誰にも責められますまい。殿下は最近お疲れのご様子でしたからね」

 ヴァンガードの言葉に、ルドルフは軽く目を見開いた後、頷いた。

「ああ、そうだ。最近私も疲れているのでな」

「ええ、そうでしょうとも。後のことは私に任せ、ゆっくりお休みください」

「そうさせてもらおう。ヴァン、感謝するぞ」

 やっと解放されたと、にこにこ笑顔が怖いヴァンガードの横をそそくさ通り過ぎようとしたのだが。