「弾は357マグナム弾……」

 これか、とシンは手にした弾を薄い青の空に翳してみた。

 その青空の中に、この弾丸を撃つ弁髪の友人の顔を思い浮かべたシンは、チラリとリィを見やる。

 やはり、気になる相手の持つ銃だからこそ、詳しく調べたのだろうか。最近は更に仲が良さげで、マテバのメンテナンスまでしてやっているという話だが。

 リィは新しい恋に目覚めたのだろうか。あの水色の人のことはもういいのだろうか。

 それなら大いに結構で、兄としては応援してやりたいところだ。そろそろ直接リィから聞き出してもいいのではないだろうか。

「なあ、リィ……」

 兄としての使命感半分、そして妹の恋への興味半分に訊ねようとすると。

「この、ちょっとだけ底部が大きいところとか、弾頭がまるんとして、すぱっ、としてるところとか、かわいいよね……」

 リィが頬を染めながらそんなことを言い出した。

「……いや、銃弾が可愛いとか、俺には分かんないけど」

「ここだよ。まるんとして、すぱっとしてるとこ……」

「分かんない」

 きっぱり言い放つシンに、リィはちょっとだけむくれた。

「このかわいさが解らないなんて、シンはおかしい……」

「いや、お前のがおかしい」

 お前がおかしい、シンがおかしい、としばらく言い合いが始まった。



 結局のところ、リィは霸龍闘に興味があるのか、それとも彼の愛銃に興味があるだけなのか、良く分からなかった。

 リィが霸龍闘と2人でいるときの顔を見れば、実は一目瞭然なのだけれども。

 恋に鈍感なお兄ちゃんには、まだ女の子の心の機微は良く分からないのであった。