そうして琴音作『兄ちゃん、姉ちゃん、等身大人形』は出来上がった。学校の休み時間も利用して、せっせと心を込めて縫い上げた、愛情たっぷりのお人形である。これと一緒ならシルヴィも寂しくないに違いない。そう思ったのだが。

 人形を見た瞬間。

「ぎゃうおおおおおおっ!?」

 ……シルヴィは目を剥いて叫んだ後、大声で泣き出した。

 等身大人形は、着ているお洋服がボロボロで穴が空いていた。ジグザグの縫い目から綿が飛び出していた。手の指が6本あった。髪の毛にした毛糸がぼさ、ぼさと抜けていった。そして片目が取れかかっていた。真夜中の暗闇で奇妙な動きで立ち上がり、呪いをかけてきそうな雰囲気だった。そんな等身大人形が2体もいたら怖い。

「あ、ご、ごめんなさい、ちょっと下手過ぎましたか?」

「うーん、そういう問題じゃないと思うよー?」

 玲音は苦笑い。

 そりゃあ、大好きな兄ちゃんと姉ちゃんがゾンビみたいになってたら泣いちゃうだろう。

 シルヴィが大泣きしたので、今度は琴音がしゅーん、と項垂れてしまった。それを玲音が慰めながら、そっと、叔母である花音が作ってくれた巨大うさぎのぬいぐるみ、五所川原くん9号をシルヴィに渡し、抱き枕に奨めた。

 今朝のうちにこうなることは見越していたので、花音に頼んで作ってもらったのだ。

 ちなみに、五所川原は1号、1.5号は琴音たちの父、和音作でどちらも花音が持っている。2号は花音が初めて作った五所川原で、もちろん彼女のところにいる。

 3号は花音の大好きな人のところに、4号は奏一郎と律花のところに、5号は和音──というか、橘家リビングの暖炉の上に、6号は拓斗のところに、7号は琴音のところに、8号は玲音のところにいる。