外界から完全に遮断された広い空間に、2人は立っていた。

 高いところに置いた真鍮のオイルランプの灯りだけが、闇の中で頼りなげに揺れている。

 磨き上げられた黒石で出来た壁、そして床。無機質な色合いに、けれども漂うのは濃い緑の香り。

 それはこの空間の中央にある、100人ほどで手を繋がないと囲えないような巨木のせいだった。暗いのでその高さを目視することは出来ないが、小さな村を丸々ひとつ影で覆ってしまえるほどには高く、そして豊かな葉を茂らせている。

 巨木は黒石の床に、そして更に地中深くに太い根を這わせ、どっしりと聳え立つ。

 それは古よりこの星を守ってきたとされる神木。人々が崇める唯一神『ユグドラシェル』。

 ユグドラシェルと繋がる中央大陸──皇都は神座。

 その地を治める者は神に選ばれし、神に等しき存在。

 『ユグドラシェル』の名とはそういうものなのだ。

 神から与えられた星の力──一般には魔力と呼ばれる──で精霊の女王を操り、この星の守護者と成り得る者だけが、神木であるこの巨木の姿を拝むことが出来る。


 けれども今ここにいるのは違う。

 彼らは『グリフィノー』だ。