古代竜という新種を発見し、なおかつ家族にしてしまったグリフィノー夫妻と魔族の青年は、一旦皇都に戻って惑星王に報告をすることにした。

 シルヴィの存在は生物学者や考古学者を初め、様々な方面に衝撃を与えた。彼女の存在は、今までのドラゴンに対する見識をひっくり返すものだったのだ。

 自分たちの住処からは滅多に出ることはなく、同じ魔族ですら狩る獰猛な生物と言われてきた竜種のはずなのに。

「こんつわー! おれ、しるびー! よろすぐなっ!」

 かわいい八重歯を見せてにかっと笑う、なんとも愛らしい人族の少女の姿で現れたシルヴィに、周りは度肝を抜かれた。

 なにこれ、かわいい。しかも人懐こい。

 しかも肉食と思われてきたドラゴンが魔力のみで生きている。他には果物をかじる程度。

 大きさは幼竜でありながら5メートルはある。大人の人間でもぺろりと一呑みされてしまう大きさだ。一体成竜になったらどれだけ大きくなるのだ。こんな巨大なドラゴンは確認されていない。

 背中には透明で柔らかな羽がふわふわっと生えている。これが大きくなったら翼になるのだろう。するとリンドブルムのようなものか。いやいや、ヤツラは凶暴だ。何度も国を滅ぼされたぞ。では古代竜とはなんだ。

 学者たちはシルヴィに興味深々。

 まさに涎もののオイシイ研究材料。

「勇者殿! シルヴィ殿をぜひ我らのもとにお預けくだされ!」

「これは歴史的発見です! 彼女の持つ知識はきっと、ミルトゥワの歴史に関わるものでしょう!」

「魔力を取り込んで成長するとは、なにか精霊に通じるものが! これは魔族の存在を根本から覆す大発見かもしれませぬ!」

「シルヴィちゃん、君の能力にはどんなものがあるのかなぁ~?」

「シルヴィたん、かわいいよ、シルヴィたん、ハアハア」

 研究者たちの目が熱い。そして若干危ない。

 フェイレイもリディルもシルヴィを隠すように抱きしめた。

 ああ、ここは危ない。

 しばらく避難させよう。

 そう決意するのに時間はかからなかった。