『シルヴィは古代竜っていうんだって。今まで見たことのない種だけど……彼女が一緒なら、ドラゴンに話を聞いてもらえるかもしれないの。上位種であるドラゴンを説得出来れば、魔族との講和にまた近づけるよ。シンとリィに会える日も近いかもしれない。待っててね……』

 そう言うリディルの後ろで。

『シルヴィ、俺の頭は食べ物じゃないぞ』

『はむはむはむはむ』

『魔力が欲しいならやるから、かじるな』

 フェイレイが頭にしがみついているシルヴィを引き剥がし、前に抱っこすると、シルヴィがじたばた暴れた。

『あぁん、魔力食いっち! 食いっちー!』

 シルヴィははむはむと、フェイレイの腕にかじりついている。

 そんな光景がしばらく続いた後で、3人が手を振って「またね」と言った。隅の隅の方に、真っ黒な格好をした有翼種の魔族な彼が、無表情にチラッとこちらを見て、チラッと片手を上げたのが見えて、そこで映像は途切れた。



 シンとリィは光の消えた映像記録器を、しばらく無言で見つめていた。

 やがて。


「……シン、今日も、一緒に寝て、いい?」

「ああ。……手、繋いで寝てもいいかな?」

「うん、いいよ」

「ありがとう」

「お互いさまだよ……」


 はああ、と深く溜息を零す双子は、ぐったりした様子だった。


 翌日、気力を持ち直した双子が、映像記録器に向かって「シルヴィ、俺たちがお前の兄ちゃんと姉ちゃんだぞ。よろしくな! ドラゴンの妹が出来るなんてすげーよ!」と元気に話しかける姿が見られた。

 本当は、彼らは竜族に対してとてつもないトラウマを持っているのだけれども。

 それはまた、別のお話。