『あううっ! 兄ちゃんと姉ちゃんに心配かげっちまったが? 父ちゃん傷つける妹なんかいんねぇって言われっちまうが? あぁん、ごめんなんしょー、怒んねでくなんしょー』

 巨大碧ドラゴンが幼女の姿に戻った。そしてフェイレイの頭に飛びついて、がじがじかじりながら泣いている。

 シンとリィの頭上ではビックリマークとハテナマークの大量生産が止まらない。もう何を言われているのかさっぱり分からない。

 そこにリディルがひょっこりと顔を出した。少し苦笑気味にこちらに向かって言う。

『詳しいことは手紙に書いたから、もう読んだと思うけど……。この子、ウチで引き取ることになったから、今日からあなたたちの妹になるの。今度会ったら、仲良くしてあげてね』



 な ん で す と ?



「ハアアアアアアアー!?」


 ようやく話を飲み込んだシンが、大絶叫を上げた。一緒にリィも声を上げていたが、やはり兄の大声にかき消されていた。

 リィは兄が握りしめていた羊皮紙を奪い取り、上から下まで速読した。そこには確かにあの幼女を引き取り、自分たちの妹になるから、という旨が綴られていた。

 その経緯について要約すると、こうだ。


 ドラゴンの棲息する山脈に近い村で騒ぎが起きていた。碧色のドラゴンに村が襲われていたのだ。

 フェイレイたちはドラゴンから村を守るべく動いたが、よくよく状況を確認してみれば、悪いのはドラゴンのお友達である碧の髪をした少女を死に追いやった村人たちであった。

 フェイレイたちはドラゴンと村人たちを説得し、ドラゴンを引き取ることで双方に納得してもらった。

 シルヴィは生まれて二百年ほどしか経っていない幼竜で、母親と死に別れたばかりだそうなので、グリフィノー家で引き取って育てることにした。

 人間に変化可能な不思議なドラゴンだし、食事は魔力で大丈夫なので、育てることに問題はない。

 フェイレイたちが死んだ後はクードに預けるつもりで、彼にも納得してもらっている。だからお前たちもシルヴィを可愛がってやってくれ……と。