「玲音様はもう少し、その方の本質を見抜く修行をなさいませ。純粋に手を差し伸べてくださる方もいるのです」

「そんなの、知ってるよ」

「知っている方はこのような卑怯な真似はなさらないものです」

 東条はスマホを玲音の小さな手に返してやる。

「……だって、いざというときのために、カードは多い方がいいじゃないか」

「敵を作るよりも、味方を作ってください。旦那様ならそうなさいますよ」

 玲音は頬を膨らませた。スマホを握り締めながら、東条を睨み上げる。

「それに、玲音様には心からの笑顔の方がお似合いです」

 東条は玲音の睨みにも動じず、笑みを浮かべながらそう言った。

「……ふうん」

 玲音は頬を膨らませたまま、少しの間黙り込む。

「……玲音様。貴方があのお二人にしなければならないことはなんですか?」

 東条の質問に、玲音はふくれっ面のまま背を向けた。

「後で謝りにいく」

 ぼそりと呟いたその言葉に、執事は満面の笑みを浮かべて頷いた。