もう一度欠伸をして、リィはシンの肩に寄りかかった。

「ねむい……」

「ん、ああ。寝てていいぞ」

「うん」

 また目を閉じたリィは、どうにも寝心地が悪かったらしく、ころんと転がってシンの膝の上に頭を乗せて寝直した。そんな妹に白いローブをかけ直してやりながら、シンは玲音の去っていた方へ目を向ける。

「そうか。大人ばっかりの世界で、玲音も……琴音も、色々あるんだな」

 彼の本質が悪いものではないことくらい、シンにも分かる。だからこそさっきは油断してしまった。

「でも、悪いことしたら叱ってやらないとな」

 それに、弱みを握られたまま落ち着いた生活も出来ないし。

 そんな決意の呟きに、リィは夢現のまま微笑んだ。





 機嫌よく林を抜けてきた玲音は、自分の機転の良さと写真の腕に大満足していた。

 ほどよくぼかした写真は幻想的で、普通に見るだけでも癒される──そう、思いながらスマホの画面を眺めていたら。

 それをひょい、と取り上げられた。

「あっ?」

「玲音様、いけませんよ」

 スマホを取り上げて玲音を見下ろしていたのは、彼の専属執事東条だった。

「東条、返してよー」

「悪戯は良くありませんね。これは消去いたします」

「あっ、駄目だってばー!」

 ぴょんぴょん飛び跳ねても東条の手元にまで届かない。東条は無表情のままに画像フォルダからシンとリィの写真を消去した。

「もう、何するんだよー」

「この写真で何をするおつもりでした?」

「え? それはぁ……」

「こんなものがなくても、リィシン様もリィファ様も、琴音様がお困りのときは助けてくださいますよ」

「むう……」

 自分がやろうとしていたことを言い当てられて、玲音は唇を尖らす。