「砂糖と塩、間違えちゃ、だめだよ……」

 眠そうな目をしながらアドバイスをするリィ。

 リィはこの世界の調理法にもきちんと目を通していた。クッキーのレシピも完璧に頭に入っている。それはシンも同じだ。星を巡る旅をしていた彼らにとって、食とは命に直結する重要なものである。食材を食べられるように調理するということは『生きる術』なのだ。

「はい、リィファさん!」

 琴音の返事はとてもいい。後ろで見守る玲音もにこにこ笑顔だ。

「まずは、薄力粉を……」

 琴音は薄力粉の袋を開け、そして。

「このくらい」

 ばさっと、ボウルに投入!

「待て待て待て! なんで量を計らない!」

 シンがさっそくダメ出しをした。

「えっ、駄目ですか?」

「だめ……。材料の分量は、きちんと計って。特にお菓子は、レシピ通りに……」

 リィが計量カップを琴音に渡す。

「分かりました」

 琴音は素直に頷き、すでにボウルに入れてしまった薄力粉を計量カップに入れた。

「ええと、これくらいですね」

「これくらい、じゃ、だめ。ちゃんと計って」

 リィが眠そうな目で琴音に迫る。

「は、はい、分かりました」

 琴音は素直に頷いて、計量カップのメモリを良く見ながら薄力粉の量を計った。

「よし、これで大丈夫です」

 出来た、と顔を輝かせて、それを新しいボウルに入れる寸前で……。

「琴音ちゃん。何グラムにしたのー?」

 玲音がにこにこ笑顔で訊いてきた。

「え? 180グラムです」

「ふうん? レシピには100グラムって書いてあるよね?」

「えっ、そうでした?」

「うん。別にその量でもいいけど、その場合、砂糖やバターの量も調節しないとね?」