一気に布団を剥がれ、ぐいっと腕を引っ張られる。暖房は弱く入れているけれど、それでも真冬の朝に布団を剥がれると寒い。いつもの調子で腕を引っ張ってくれたシンのぬくもりを求めて抱きつこうとして──やめた。

 憎らしい。

 あの丘が。

 健康的な希望の丘が、憎らしい。

「……な、なんだよ」

 いつものようにリィが抱きついてくるものと思い(そこからほっぺにおはようのキスをするのが日課)、両手を広げて待機していたシンは、じとーっと睨んでくる妹に困惑する。

「……シン、キライ」

 うるうる涙目で訴える妹。

「だからどんな夢見たんだよー! いきなり嫌いとか言われると傷つくだろー!」

 謂れのない怒りを買い、うろたえる兄。

 グリフィノー兄妹は、こんな一年の始まりだった。


 ちなみにシンの初夢は、前日の新年会でおいしいものをたくさん食べたおかげか、たらふくご馳走を食べるしあわせな夢だった。