しかも。

「ちゃんと女の子? どうして?」

 好奇心旺盛で活動的な外見はシンのものだが、しかし決定的に違う部分があった。

 胸がある。

 胸があるのだ。

 真っ平らではないのだ。

 しかも。

「私より、大きいっ……!」

 わなわなと、シンに似たリィの身体が震えだした。

 まだ12歳の少女らしく、その胸は小さな手にすっぽり収まるほどのかわいらしいものだった。それでもリィよりはある。確実にある。だってリィはまだ、ほぼ断崖絶壁だから。

 健康的な肢体についた緩やかな丘陵は、これからの成長を十分に期待出来る育ちぶり。まさに光溢れる『希望の丘』だ。

(どうして?)

(シンが女の子だったら、こうだったの?)

(ずるい)

(シンは男の子なのに……!)

 断崖絶壁の上に立ったリィの足元が、ガラガラと崩れていく。

 シンのばか、シンなんてキライ、そう叫ぶ声は彼方へと消え去り、やがてその憎らしい顔が薄暗い部屋の中に再び現れた。

「なんだよ、人のこと馬鹿とか嫌いとかー」

 拗ねたように唇を尖らせたシンが、そう呟く。それをぼんやりした目で見つめていると、もしゃっと頭を撫でられた。

「どんな夢見てたんだよ。寝言で俺の悪口言ってたぞ」

「……ねごと? ……寝てた?」

「寝てたよ。ほら、起きろ、朝だぞ」