朝になり、目を覚ましたリィは、ぼーっとした頭でベッドから下りた。

 ドアを開けて、薄暗いリビングを見回す。

 誰もいない。

 リィがシンよりも早くに起きるとは珍しいことだ。リィは低血圧なので、一年が365日あれば365回は起こしてもらっている。366日あれば、一回くらいはリィの方が早いかもしれないが。

 はにゃー、と寝惚けた顔をして壁時計を見上げれば、まだ5時前。シンを起こすにしても早いな、とリィはサニタリールームへ向かった。

 少し寝癖がついているのか、撥ねている感触のする髪を撫でながら鏡の前に立ったリィは、薄暗い鏡の向こうにいる、眠そうな顔をした『シン』を見た。

 しばらくぼーっとそれを眺めるリィ。

 静かに時が過ぎて。

「シン?」

 こてん、と首を傾げながら声をかけると、対面にいるシンも同じ方向に首を傾げた。

 双子だからなのか、よく自分たちは同じ方向に息ピッタリに首を傾げることがある。だから同じタイミングで首を傾げることは別段不思議なことではなかった。

 けれども何かおかしかった。

 リィは意図して逆に首を傾げてみた。

 対面のシンは、やはり同じ方向に、同じタイミングで首を傾げた。

「……?」

 目を瞬きするタイミングも、眉を潜めるタイミングまで同じ。いくら双子だからって、ここまで同じ動きをされると気持ち悪い。まるで鏡の中の自分を見ているようではないか。