一頻り遊んだところで、こんなものかと水から上がり、そこでふとリィに視線をやった。

 濡れた白い衣がぴたりと身体に張り付いて、身体のラインが綺麗に出ているのをしげしげと見つめた彼は。

「お前、全然育たないなー」

 と、感想を述べた。

「あんまり貧相だとモテないって聞いたぞ。もっと食わないと駄目なんじゃないのか? リィは少食だから育たないんだ」

 兄らしく妹の心配をしてみたつもりのシンである。

 リィはこてん、と頭を傾げる愛らしい仕草の後、しばらく動かなくなった。何か考えているらしいのだが、いつもゆっくりなのでシンはのんびり返事を待った。

 結果が。

 問答無用で鼻っ柱に後ろ回し蹴り、しかも綺麗に踵が入った。

 階段を派手に転げ落ち、水の中に沈む。泉が鼻血に塗れた。ますます禊台無しである。

「シンは、デリカシーがない」

 リィはちょっと涙目だった。どうやら気にしていたらしい。

 のほほんとしているようで、割と繊細で敏感な妹だった。勇者と世界一の拳闘士を師に持つのだから、大人しそうな外見に騙されてはいけないと言うヤツではあるのだが。

 小動物の耳のようなお団子頭が、しゅん、と項垂れてしまったように見える妹の姿に、もしかしたら折れたんじゃないかという鼻の痛みを我慢しながら叫んだ。

「大丈夫だ、リィ、お前は可愛い! そんだけ可愛いけりゃたとえ胸がぺちゃんこでもきっと大丈夫だ! だって俺は好きだもん! 胸なんか抉れてたって、ぜんっぜん大好きだ!」

 フォローを入れているつもりなのだろうが、フォローになってない阿呆の子シン。