麗しき星の花

 水の流れる広間の端をぐるりと周り、その先の扉へ辿り着く。

 白い扉には皇家の紋章である翼を広げた不死鳥と王冠が彫り込まれ、金で装飾されていた。

 広間に満ちる泉に反射した光に照らされた扉を開けようとして、リィが横へずり落ちそうになった。それを背負い直し、ぐっと扉を押す。

 ここは自動では開かない。禊の間は近世に建て増しされたものだからだ。つまりこの禊の風習も近世に付け加えられたものである。

 歴史の浅い風習になんの意味があるのかと思ったのだが、儀式には必要な手順を踏まなくてはならない、と言われてしまっては従わざるを得ない。



 禊とは、身体を洗い清めること。

 皇家では精霊を神の御使いとしているので、対面するには身も心も清らかでなくてはならない。

 契約の儀式前に、水に入って少し頭から水をかけるくらいでいいよ、と教えられていたシンは、前合わせのシンプルな白い衣装に着替えて、階段の一番上からドボンと水の中に飛び込んだ。

 さっそく頭からびしょ濡れになったシンは、水の温度を確かめるようにそっと爪先をつけるリィがもどかしく、両手でばしゃっと水をかけてやった。

 手加減知らずのその攻撃は、リィを頭からびしょ濡れにした。

 濡れてぺしゃんこになったハニーブラウンの髪を見て、シンは声を上げて笑った。

 そうしたら仕返しがきて、水の掛け合いが始まった。きゃっきゃっとはしゃぐその姿は、禊の意味をまるで理解していない。