夜中、目を覚ます。

 寝返りも打てる気がしないほど、倦怠感に支配された身体は熱く、冷感を求めて布団から手を出してみた。闇に沈み込む空間はひんやりとしていて、上がりすぎた熱をさらりと攫っていく。そのまま頭を動かそうとして、ぐわん、と中が揺れた。

 痛い。

 熱のある目に涙が浮かぶ。

 ずんずんと脈打つ痛みが静まるまでジッと耐える。それからゆっくりと目を開いて、視線だけで辺りを見回した。

 静かな闇に包まれた部屋が、なんだかいつもと違って見える。

 広いふかふかのベッドも、そこにいるウサギのぬいぐるみも、天井の花形の傘のついたライトも、窓を覆うドレープがかわいい白いカーテンも、ダークブラウンの勉強机も、そこに積み上げられたたくさんの分厚い本も。みんな見慣れたものであり、居心地の良い空間を作り上げるものであるはずなのに。

 何故だかとても不安だ。

 なにかを探すように、視線を巡らせた。胸の中に湧き上がる不安。それを取り払うなにかを。

 頭を少し動かして見た先に、それを見つけることが出来た。シンだ。

 シンは椅子に座ったまま眠ってしまっていた。肘掛に頭を乗せたその格好は変に捻じ曲がっていて、今にも転げ落ちそうだった。

「……同じ部屋にいたら、うつっちゃうよ……」

 なんて呟くものの、リィの顔には穏やかな笑みが浮かんでいた。

 闇に沈んだベッドに身を置くことはとても心細かった。けれどシンの姿を見た瞬間に、その不安が和らいだ。