麗しき星の花

 その敵にシンがぽわーんとなっている間も、父は戦闘中にしか見せない凛々しい表情を崩すことはなかった。サキュバスの出現で母が焦っていたけれども、いつもとなんら変わりない父を見て、「フェイは本当に凄いね……」と呟いていた。

 ただ、シンはそうはいかなかった。

 まだ子どもだったので醜態を晒すことはなかったものの、敵が消えた後も酒に酔ったみたいにフラフラしていて、母に飛びついて胸に顔をぐりぐりこすりつけて「にゃははー、かあさん、だいすきー」と甘えまくった。

 そして父に、「母さんのすべては父さんのものだ!」と、頭に拳骨を食らって正気に戻った。……今思い返すと、死にかけたことよりも恥ずかしい記憶だ。



 そうやって砂漠を超えて辿りついた街で、それがサキュバスという悪魔であり、精神系の術をかける悪魔からはどんなに屈強な精神力をもってしても逃れられるものではない、と教えられた。だからこの星の住人はサキュバスの住処である砂漠には入れないのだとも。

 では何故父は術に嵌らなかったのか?

 その答えを、父はあっけらかんとした顔で言ってのけた。

「え? だってリディルより魅力的な女なんていないだろ?」

 なにこの嫁馬鹿! 怖い! ……と街の人たちに絶賛された。おかげでその街でも父はヒーローだった。

 そんな父の背中を、シンは尊敬の目で見つめたものだ。どんなときでも大切な者を見失わない、そんな父を尊敬するシン。

 そしてリィは、目を輝かせて父を見ていた。

 わたし、とうさまみたいな人のおよめさんになりたい、と。