麗しき星の花

 振り返り、樹齢1万年を超えると推測される神木を見上げる。

 この星の文明の跡。

 人の誕生、精霊の誕生、そして魔の誕生。

 自分たちの血の歴史すべてを見てきたのだろう神木の姿を目に留め、大きく深呼吸する。

 この木も不思議の塊だ。

 周りを取り囲む黒石も、自動ドアも、不思議な仕掛けも。少年の探究心と好奇心を否が応にも刺激してくれる。

「いつか謎を解き明かしたいなー」

 胸の中で弾ける、冒険心。



 神木に別れを告げ、自動ドアをくぐった先の廊下も透き通るほどに磨き上げられた黒石で出来ていた。シンの背よりも高さのある根があちこちにはびこっている。

 高い天井から明るい陽が差す廊下を、アーチ状になった根の下を身を屈めながら、ときにはジャンプして飛び越えながら歩いていく。

 しばらく行くと水の流れる音が聞こえてきた。

 音の出処は廊下の先にある円型の広間。

 天井は3階分ほどだろうか。白い壁で開放感のある高さだが、神木のある神殿や歩いてきた廊下の高さに比べれば随分と低い。窓は小さな円いものがひとつ天井に開けられているだけなので、ぼんやりとした明るさだ。

 細い根が張り巡らされた円い室内の床は、階段状のすり鉢型になっていた。そこから下まで幾筋もの清水が流れ、底に溜まっている。

 ひんやりとした温度のここは禊の間だ。ここで身を清めないと奥の間──先程シンたちがいた神殿には入れない。

 神殿は皇族にだけが許される、精霊の女王たちとの交わりの場。

 そこに入れるのは皇の血と名を持つ者のみ。たとえ皇帝の伴侶であろうと、血を持たぬ者が入ることは許されない。そういう場所に2人はいたのだ。