「このような出で立ちで申し訳ありません……。この嵐で別館が停電になってしまったようで、外にある配電盤を見に行っていたところだったのです。そこにリィファ様がいらっしゃったので、灯りをお持ちしようかと声をかけようとしたところ……このように、昏倒されてしまいまして。驚かせてしまったようで、本当に申し訳ありません」

 北山は丁寧に頭を下げた。

 よく見れば濡れてボサボサの頭には葉っぱが二枚ついていた。外の見回りをしていたからだろう。それにこの風貌であるから、幽霊と見間違えてしまったらしい。

「ははは、本当に凄い出で立ちだねぇ。それは勘違いされても仕方ない。リィファちゃんには悪いことしたねぇ」

「ええ……本当に」

 北山はまた頭を下げ、どこからともなく黒いゴムを取り出し、乱れた髪をひとくくりにした。

「ふう……やはり、コーディネートはこーでねーと……」

 死んだ魚の目が、ほんの少し憂いに揺れた。

 シンは瞬きを繰り返し、奏一郎はふふ、と軽く笑った。

「それにしても、先ほどの蹴りは見事でした。もう一撃喰らえば骨が砕かれていましたよ……」

「ほう、そんなにいい蹴りだったのかい? さすが勇者のお子さんだねぇ」

 パチパチと瞬きを繰り返していたシンは、はっと我に返った。

「はっ? あ、ああ、ええと……ああ! すみません! 思い切り蹴ってしまって!」

「いいえ、大したことはありません……一週間ほど使い物にならないかもしれませんが……」

「えええ! すみません!」

「ええ、物凄い気迫でした……思わず回れ右して逃げようかと思いましたよ……」

「はははは、武道の達人である北山をそこまで恐れさせるとは、本当に凄いねぇ」

「あ、いや、その……す、すみません……」

 シンはリィを抱えながら縮こまった。ちゃんと気配を読んでいれば、こんな勘違いをせずに済んだのに。状況を視覚だけで判断してしまったことに、シンは反省した。