この星で生まれ育った両親には分からないだろうけれども、生まれたところも育ったところも違うシンは『変だ』と思う。

 古代文明の遺物『神の船(ティル・ジーア)』という空飛ぶ黒い戦艦が蒼い空を渡る、精霊や魔族という霊的存在がいる不思議な世界。

 古びた石造りの街並みの中に突如現れる鈍色の高層ビル。

 自動ドアのある先進的な造リのターミナルへ人を運ぶのは乗合馬車。

 のどかな人々の生活は原始レベル。火を熾して食事を作リ、手洗いで洗濯をする。

 なのに国が管轄するところでは宇宙港もある。パソコンもある。銀行は国営のものが多いので、すべて身分証明代わりのIDで管理されていて、右手首にはめたバングルで認証を行い、各所にある自動支払い機でお金を引き出すことが出来る。

 ……おかしい。

 銀行に関しては、かつて世界中を襲った自然災害時に、多くの身元不明の死者を出したことから、ID(個体識別符号)を民衆に与え、国が管理するシステムを導入し(導入時期はフェイレイがギルドに入った頃だ)、それを利用したのが病院、銀行などの国営組織だったというだけのことなのだが。

 それにしてもこの世界はおかしい。

 おかしくて、ワクワクする。

 シンはこの星が好きだ。この星で生まれた両親も好きだ。ここで出会ったみんなが好きだ。

 だから──別れたくないのだ。