「うん。琴音が好きに見ていいって言ってくれたから……興味深い本がたくさんあるよ。今度シンも……」

「いや、俺はいい。地質学や考古学は興味あるけど、今のところ読める気がしない」

 速攻で断る兄に、リィはそうだよね、と頷いた。

 しかし、ひらがなは読めるようになってきたので、ルビが振ってある漫画は読めるかもしれない。早く菜野人と世紀末救世主伝説を読んで、○メハメ波をぶっ放して「お前はもう死んでいる」とか言いたいわけである。あれ、違う?

「じゃあ、その絵本、持ってきてあげる。待ってて……」

 ページをめくっていた魔導書をテーブルに置いて、リィは立ち上がった。

「一緒に行こうか?」

「いいよ。それ読んで、待ってて……」

 リィが部屋を出て行ってから、シンは魔導書を手に取った。難解な漢字が多くて半分も読めなかった。なのでリィの描いた召喚魔法陣を覚えることにする。これを頭に叩き込み、召喚時に瞬時に魔法陣を浮かび上がらせるのだ。



 書庫は別棟にあった。

 玄関の正面にある広い階段の裏側にあるドア。そこから廊下を行った先に繋がっている。本邸より以前に造られたらしい、古い洋館だ。

 築100年くらいはあるのではないだろうかという木造の建物は、重厚かつ荘厳な雰囲気でリィを迎える。

 灯りは落ちていた。使っていないのだから当然だ。薄暗い廊下にスリッパの音だけが響く。

 と、ガタリと窓硝子が揺れた。びくりと肩が跳ねる。