琴音や玲音と一緒に楽しい夕食を終えた後、シンとリィは自室のリビングで召喚魔法陣について書かれた魔導書を広げていた。

 この魔導書をどこから手に入れたのかと言えば、琴音たちの叔父、拓斗経由で魔法陣に詳しいお方に借りたのだった。

「これを応用して、新しい魔法陣、描いてみた……」

 リィは白い紙と本を並べてテーブルに広げた。大きな円陣に丸や三角、それに文字を組み込んだ魔法陣だ。

「なんて書いてあんの?」

「風を喚ぶ呪文……。これで、詠唱を省略しても平気だと思う……」

「マジで? リィは凄いな!」

「試してみないと分からない。シンが言ってた、治癒の使える精霊を優先して……まずは、風を」

「へえ、地球の精霊は風が治癒魔法使えるんだ」

「そうみたい。名前を、呼んであげればいい……」

「えっと……シルフ?」

 召喚魔法陣に描かれた文字をなぞり、シンが呟く。まだ日本語が読めないというシンのために、文字は英語で刻まれていた。……読めれば日本語がいいと思っていたリィであるが、地球の言語ならば問題はないはずだ。

「シルフの名前は、森や樹木を表すラテン語からきてるんだって……だから」

「なるほど、フォレイスに似てる部分もあるってことだな」

 ミルトゥワの治療系精霊は森の精霊フォレイスである。そこに類似点を見つけてシンは大きく頷いた。

「てか、ラテン語って何語?」

 ……ラテン語だよ。

 シンのおバカな質問をスルーして、リィは魔導書を手に取った。

「他の精霊の名前は……そうだ、ここの書庫に絵本があるから、それでこの世界の精霊のイメージを掴むといいかも……」

「あそこの本、読んだのか?」

 質問がスルーされたことをスルーして、シンは一度だけ見た図書館ほどに広い橘家の書庫を思い浮かべた。