鬼龍ちゃんは私と同じ年なのに、どうしてあんなに大きな山を持っているんだろう。

 同じクラスで仲のいい薙沢野菊ちゃんは、私より、平坦だったけれど。鬼龍ちゃんは今にも何かが弾け飛んできそうな……まるで噴火を繰り返す活火山のような、凄まじい盛り上がり。

 羨ましい。

 遺伝的にああなるのが無理だとしても、せめて、せめて……丘くらいは。

 登るのに息が切れるような、急な坂道を持つ丘でなくてもいい。春に息吹いた緑を優しく穏やかに撫でる、そんなささやかな風を吹き降ろすくらいの丘でいいから……。断崖絶壁に激しく打ち付ける荒波の寂しさから、早く私を解放して……。


 ふと気づくと、同じく牛乳を飲んでいたシンが、なにか言いたげに私を見ていた。

 こてん、と首を傾げると、「いや、別に」と目を逸らされた。……なぁに?

「いや……まあ、気にすんなよ」

「……なにが?」

「世の中には巨乳好きはたくさんいるけど、同じくらい貧乳好きもいると思う。だから元気だせ」

 ぽん、と肩を叩かれた。

 ……今考えてたことが分かったの? と首を傾げる。

「お前、今日元気ないだろ?」

「……そう?」

「うん。そのことで悩んでんだろ?」

 ……元気、ないように見えるのかな。

 元気なくなるほど悩んではいないのに。むしろ鬼龍ちゃんの活火山の柔らかさを思い出して微笑みが浮かぶくらいだけど。

 ……ああ。

 左大腿のホルスターに収められているヴィオラを、そっと撫でる。……少し、ホームシックみたいに、なっているのかも。今日はよく思い出してた。……ヴァンのことを。