「そう、なのですか?」

「ええ。でも琴音ちゃんから見たら、わざと負けているように見えるのかもね」

 首を傾げたら、要は更に微笑みました。

「あれは、そうなるようにリィファちゃんが仕向けているのよ」

「え?」

 どういうことなのか首を傾げる私に、要は頬に手を添え、うーん、と考えます。

「ええとね。リィシンくんは下手な攻撃をすると、リィファちゃんからカウンターをもらうってことが分かっているのよね」

「ええ、そうでしょうね」

「だから、リィファちゃんの動きの先の先まで読んで動いているの」

「はい」

「リィファちゃんはそれを逆手に取っているのね。多分だけど、リィシンくんが勝負をかけるタイミングを、自分の思い通りのタイミングに持ってきてるのよ」

「……意図的に?」

「そうね。視線でフェイントをかけつつ、うまく誘導しているみたいね」

「そんなことが可能なのですか?」

「まあ……出来るんでしょうねぇ」

 窓の外のお二人はくすぐり攻防をやめて、寝転びながら白い空を見上げていました。まだ外は肌寒い時分ですが、激しい運動をした後ですから、ひんやりした空気の中にいる方が気持ち良いのかもしれません。

 そんなお二人を見ながら、くすくすと笑う要。

「視線ひとつで男を転がすなんて、恐ろしい子だわー」

 ……確かに。

 でも、リィファさんには心からの賛辞を贈りたいと思います。