徐々に辺りが白みだす早朝。

「さあ、今日もはりきってお掃除をいたしましょう」

 私が笑顔でそう言うと、廊下に整列したメイドたちが一斉に頭を下げました。

「はい、お嬢様!」

 その声に満足し、私はまずリビングへ向かいます。

 このお屋敷は広いので、私や弟の玲音だけでは手が足りません。でもせめて、家族が使用しているプライベートスペースくらいは自分でお掃除しようと思っているのです。

 お父様から頂いたフリルのたくさんついた白いエプロンと三角巾を被り、まずはテーブルや暖炉の上を拭き掃除。

 暖炉の上に鎮座する、花音叔母様──とても叔母様などと言えないような可愛らしい方なのですが──お手製のうさぎのぬいぐるみ、『五所川原くん5号』も、丁寧にほこりを払います。

「おはようございます、五所川原くん。今日も私たちを悪事からお守りくださいね」

 そう声をかけると、つぶらな黒い瞳が『任せろ!』と言っているようで、とても頼もしく思えます。


「琴音ちゃーん、リビングは終わったかしらぁ~?」

 しばらくすると、ダイニングの方からそう訊ねる“男性の”声がしました。

 ひょっこり顔を出したのは、スラリと背の高い、執事服に私と同じ白いエプロンと三角巾を着けた、美しい青年です。