休憩時間にスマホケースを編むつもりが、いつの間にかスーパーの袋サイズのスマホケースになっていた。
驚いて手を止めたが、相当心ここにあらず状態であったことに、驚いた。
仙田先生はそんな私を心配してくれたようで、何かリラックスできるお茶を淹れましょう、とキッチンへと向かった。
心配をかけてしまったことをとても申し訳なく思いながら、私は何度も頭を下げた。

「……で、何に悩んでんの? 恋愛絡み?」
「う、うーん……好きな人の家族絡みというか……」
「好きな人いるんだ」

へー、と興味なさげに彼が呟いたので、私はもう話す気力が無くなってしまった。
もういいよ、と言い放ち編み物に集中すると、彼は私の手に手を重ねて動きを制し、どんな奴なの? と聞いてきた。

「どんな奴……うーん、掴めない人っていうか……。人の心の隙間に入ってくるのが上手いというか……」
「何そいつ、ホスト?」
ホスト発言に思わず吹いてしまったが、私は話を続ける。
「この前、その人の妹にね、私からお兄ちゃんを取らないでって、ビンタされて」
「まじかよ、すげーブラコンだな」
「深い事情があったんだと思うけど……」
「それで、その好きな人を好きでいていいのか、ちょっと分からなくなってきちゃったわけ?」
呆れたような彼の言葉に、曖昧に頷くと、彼はため息を吐いた。
だって、あんな泣き顔を見てしまったら、誰だって戸惑うと思う。先生に確認できることでもないし。