「先生、それは愛だと思います。」完


ユイコは顔面蒼白になりながら手編みのセーターを拒否した。ユイコ曰く、手作りのものは本当に扱いに困るらしい。でも、なんらかの形でお礼をするのはマナーだと思うし……私が得意なことって編みものくらいしかないし……。

そんな風に思っていると、ユイコが、そんなことより、と言って話題を元に戻した。

「今日部活終わったら青葉学園の前で待っててよ。先生に会いに行こっ」
「本当に会いに行くの!?」

当たり前でしょ、と言ってユイコは踏ん反り返った。
ユイコの高橋先生に対する想いは相当だ……。なんでも高橋先生は大好きな俳優に似てるからだとかなんとか……。
遠くで切なそうな顔をしているユイコの彼氏が不憫でならなかった。


手芸部の活動を終えると、私はあまり乗り気じゃないまま青葉学園へ向かった。
私の高校――東海林高校から自転車で十分ほどのところにある大きな高校だ。

ユイコは陸上部に所属しており、汗臭いから一度家に帰ってシャワーを浴びてから来るそうだ。
私は手芸部の部長なのだが、今年の新入生の引き継ぎだけ終えたら、引退する予定だ。ユイコも六月の全国大会を終えたら、引退する。

青葉学園は思ったよりずっと校舎が綺麗で、さすが県内一の進学校なだけあると思った。
青葉学園は男子の割合が多く、校門付近は青い学ランで埋め尽くされている。
ひっそりと校門に近づいたが、じろじろと視線が当てられてとても居心地が悪い。はやくユイコに来て欲しい……そう思って待っていると、突如スマホが震えた。