「おい誠、分かってるのか、お前は俺の会社を継ぐ身なんだからな。半端な大学じゃ顔向けできんぞ」
「……うるせーんだよ」
ぼそっと低い声で呟いてソファーに座ると、父親はなんだと? と一気に真剣な顔になって近寄ってきた。
しかし、それを母親が制した。
「蓮助さん、もういいじゃないですか。今日は誠も疲れているみたいだし……、ご近所さんにまた言われちゃう」
「お前がちゃんと躾けていないから誠がこんな生意気に育ったんだっ」
「あなたはいつも家にいないじゃないっ」
まるで台本通りのテンプレドラマのような会話がリビングで繰り広げられ、俺はおかしくて思わず笑った。
全てがどうでもいい。
こんな家、はやく出て行ってやる。
家を出ても、そこそこの大学に合格すれば、学費は振り込んでもらえるだろう。
働いたら学費の全額を返金して、何も口出しされないように、遠いところで勝手に働こう。
ああ、そうだ。どうせなら父親の大嫌いな職業である、公務員になろう。あいつはいつも安定志向をバカにするところがあるから。



