そういうと、先生は本当だな、と言って、少しだけ笑った。
数年ぶりに先生の笑顔をこんなに間近で見て、私は、あの時と同じくらい胸が苦しくなるのを感じた。
「……心美が、結婚したんだ」
「え……、心美ちゃんがですか!? まだ学生のはずじゃ……」
「短大に行ったんだ。突然被服デザインの勉強がしたいって言って。高校の時入ってた文ちゃんの部活に影響されたらしくてね」
「えええ……、あんなにお裁縫興味なさそうにしてたのに」
「短大の教師と結婚したよ。あいつは本当に年上に弱いらしい」
静かに苦笑して、先生がブラインドから漏れた光を閉じた。
少し薄暗くなった会議室に、時計の秒針が動く音だけが妙に響く。
「今までありがとう、もう代わりを見つけたからいいよって、言われたよ」
「うわあ、なんだかあっさりしてますね……」
それもまた心美ちゃんらしいけど……。
「もういいよ、ありがとうって、ウエディング姿の心美に何度も言われて……、不覚にもうるっときたわ」
「はは、先生でもうるっときたりするんですね」
「俺やっぱり人間だったんだなーって、その時思ったよ」
「はは、疑ってたんですか」
そうか、心美ちゃんは、心美ちゃんを守ってくれる人と、出会えたんだ。
それなら、よかった。あのままずっと先生だけが心美ちゃんの世界のすべてだったのなら、それはとても、もったいないことだったと思うから。
あの心美ちゃんの心を開いた旦那様がどんな人かすごく気になるけれど、きっと先生に似た人なんだろうとは思う。
「心美のウエディング姿を見て、結婚っていいなって……本当に純粋にそう思えた。ここまで生きてきて、初めて」
先生は、顔を片手で覆って、心の底からほっとしたようにそう呟いた。
そんな先生を見て、私はついなにも考えずに質問してしまった。



