冗談にしては質の悪い冗談を言い残して、須藤さんは扉を閉めた。
小会議室はこざっぱりとしていて、コの字に並んだ白いデスクと、五脚の椅子しかない。
私は、さっき走り書きをしたメモを読み返して、言われた通り復習をしたが、緊張しすぎて全く頭に入ってこない。
一体どんな先輩だろう……さっきのは本当に脅しなのだろうか……。
どうしよう、緊張しすぎておなかが痛くなってきた……。
と、その時、ガチャリと重たい音が響いて、長い影が会議室に伸びた。
私はすくっと立ち上がり、扉に向かってすぐに頭を下げた。
「今日から配属されました、文月と申します! よろしくお願いいたします」
「……高橋です、こちらこそよろしく」
「え……」
……忘れるはずがない。
この、声。目にかかる長さの前髪、すっと通った鼻筋に、形の整った唇。
横に流した、少し長めの前髪からのぞく、切れ長の瞳に、ぽかんとした表情の私が映っていた。
「どうぞ、座って」
「あ、はい、失礼します」
彼は、薄型のパソコンを開いて、私と少し距離を空けて横に座った。
「少し待って、今パワポ開くから」
タイピングをする指は、あの、チョークを持っていた時の美しい指そのままで、私は茫然としたままその手を眺めていた。
嘘だ、本当に、あの高橋先生?
え、なんで、どうして……教師は辞めてしまったの?
パニック状態でまったく考えがまとまらないし、なによりも平然としている先生の様子に、私はますます困惑するばかりだ。



