「先生、それは愛だと思います。」完


「卒業おめでとう、文ちゃん」
「あ、ありがとうございます……」
「はい、これ、あとで開けてね。プレゼント」

先生は花が刺さっている胸ポケットに、すっと小さな袋を入れた。
「え。なんですか? これ」
薄くて軽い感じだったので、手に取ってみても中身が何なのかわからなかったが、後で見て、とポケットの中に再び押し込まれてしまった。
先生は、春になって少しだけ髪を短く切った。目にかかっていた前髪がすっきりとして、先生の瞳がまっすぐぶつかるようになって、少し照れくさく感じるのでまだ慣れない。
「お母さん、もうすっかり元気になったみたいで、よかった」
「もうピンピンですよ! 最近はダイエットするんだって、変なエクササイズ始めました」
「はは、お母さん相変わらずアクティブだね」
「そうなんですよ、またケガしないかひやひやしますよ」
体を縮めながらだけど、こんなに近い距離で先生と話せることが嬉しくて、私は勝手にいっぱい話してしまった。

こんなことがあってね、こんな風に言われてね、でもその時はこうしてね。あのね、先生、聞いて。
まるで娘みたいにはしゃいで話してしまったけれど、先生は穏やかに微笑んで、全部ちゃんと聞いてくれた。
全部聞き終えてから、先生はそっと噛み締めるように呟いた。

「……文ちゃんは、いい子だね」

そう言って、先生は私の頭を撫でた。久々に先生に触ってもらえたことが嬉しくて、私は素直に撫でてもらった。
先生の大きな手が髪を滑っていくのが心地よくて、胸の中が幸せな気持ちでいっぱいになったけれど、ぴたりと手の動きが止まった。
その瞬間なぜか私は、少し嫌な予感がしたんだ。