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……4年前のその日は、生憎の曇りだったが、私達の代の担任をもっていた高橋先生は、東海林高校の卒業式に来てくれた。
もちろん先生が来てくれたことで、クラスの女子のみんなは久々に若様フィーバーになってしまい、先生にはとてもじゃないけど話しかけに行けなかった。
けれど、スマホに先生からメッセージが入っていたので、話せなくても寂しくはなかった。
『式が終わったら、職員専用の駐車場で会おう』。
そこは、私が先生に告白した場所だったから、私はなんだかその時のことを思い出して胸がギュッと切なくなってしまい、同時に、卒業したことによってこれから堂々と先生と会えることを嬉しく思った。
お祝いの花を胸に一輪刺して、なんども髪形を鏡でチェックして、先生が駐車場に来るのを待った。
「おめでとうって、はやく言ってほしいな……」
思い起こしてみると、この受験期間に本当に本当にたくさんのことがあった。
たくさん涙も流したし、たくさん怒ったし、虚しくなったりもしたし、全部投げ出したくなった時もあった。
だけど私、先生のことを好きになって本当によかったと思っているよ。
そしてこれからも、これからはもっと、こういう気持ちを先生と一緒に分かち合えたらと思っているよ。
まだ十八歳だけど、まだまだ子供だけど、でも、本当に先生のことがひとりの人間として愛しいよ。
はやくこの気持ちを先生に伝えたい。遠慮なく伝えたい。
「……文ちゃん、待った?」
「先生、やっとファンサービス終えたんですか?」
「指紋無くなるほど握手したわー」
先生の適当な冗談を聞いて、少し緊張がほぐれた。
スーツ姿の先生は、十八歳の私にはいまだに刺激が強くて、かっこよくて直視ができないほどだ。
そんなことも知らずに、高橋先生は私を車の陰に引き寄せた。
先生の車の後ろでしゃがんで、今日初めてしっかりと目を合わせた。



