多くを望まなかったはずなのに、君の笑顔を見た途端、そんなことは全部吹っ飛んで。


抱き寄せてしまっていたんだ。


君のプルオーバーから、甘い香りがして、さらに鼓動は高鳴って。


恥ずかしさとは裏腹に、今すぐにこの世界のすべてが止まってしまえばいいのに、と強く願った。


しばらくして、ホットココアが彼女の手からするりと落ちて。


コロコロと道の端に転がっていくのが見えて、我に返った。