黄泉の本屋さん



「じゃあ、始めますね」



浅葱が、暁を呼び扇子の姿に変える。
そして、いつもの呪文を唱える。



しかし・・・。




「あれ?」




辺りを見渡す。
なにも、変わっていない。
この間の黒瀬さんの時に感じた風も、見えてきた記憶も見えない。
失敗・・・?




「君、記憶失っていないね?」

「は、はい」



浅葱がふぅ、と息をついてゆめかさんに尋ねた。
記憶を失っていない?
ということは、亡くなってからあまり時間がたっていないってこと?



「浅葱?」

「ああ、ごめん。珍しいんだよ。まったく記憶を失くしていない人っていうのは」

「そうなの?」

「たいていはね、心残りでその場から動けなくなって。記憶を失くしていく。記憶を失くしていくことに不安を覚えてここに来る人がほとんどなんだよ」