「目を閉じていてね」
そう言われ目を閉じると、身体が浮遊感に包まれる。
怖くなって浅葱の手をぎゅっと握る。
すると、浅葱は私の手を握り返してくれた。
「いいよ」
そう言われ目を開けると 、そこは、黄泉屋書店ではなく、どこかの屋上のような場所。
辺りを見渡すと、街。
懐かしいと思える光景。
「ここは、産婦人科病院だね。彼は長い間彷徨っていたせいで、ほとんどの記憶をなくしていたんだ」
「え・・・?」
「記憶は新しいものからなくしていく。取り戻すのは古いものからなんだ」
「じゃあ、初めての記憶がここってことは」
「生まれた時の記憶もなくしていたってこと」
じゃあ、覚えてたのは名前だけだったんだ・・・。
黒瀬さんを見る。
黒瀬さんは顔を俯かせたまま立っていた。
「あ、あった」
「え?」
浅葱が突然駆け出した。
そして下から何かを拾い上げた。
「これ、記憶のかけら」
「え、これが?」
浅葱が見せたのは、1本の万年筆。
記憶のかけらって、ペンなの?
思ってたのと違う。


