「こんなに、人って来ないものなのね」

「え?」

「日本は広いのに、人が死なないのはいいことだけど」

「ああ、違うんですよ」




歩きながら疑問を投げかけると、浅葱が笑いながら顔の前で手を振った。
違う?違うって?



「人は、もちろん毎日亡くなっています。ですが、天寿を全うし多少は必ずしもあるものですが、引き止めるほどの未練を持たずに亡くなる人もいます。そう言った人はここには来ず、そのまま常世へと誘われます」

「じゃあ、ここに来るのは・・・」

「はい。未練があり、どうしても成仏できない彷徨う魂。それでも、行くべきところへ行きたいとも思っている魂が、ここに引き寄せられるのです」




そっか。
大きな未練なく、成仏できる人もいるんだ。




「逆に、成仏する気などさらさらなく、ここにも来ることができない魂もいるという事です」

「その魂はどうなるの?」

「・・・地縛霊や、悪霊になり、現世を彷徨うことになります」

「え・・・」



悪霊・・・。
背筋が凍った。