未練を晴らす場所。
そして、その代わりにその人の物語を一冊の本としてもらう。
それが、浅葱の仕事。
閻魔さま、とかそんな感じかしら。
不思議だ。
私も、死んだらここに来て一冊の本を残すのかしら。
しょっちゅう人が来るわけではない。
浅葱の言葉通り、結局午前中は一人も人は来なかった。
こんなものなの?
1日のうちに、あまり人が死んでいないという事なのかしら。
それはいいことだと思うけれど。
それにしても、日本全国広いのにこんなにも来ないのは、さすがに変じゃないかしら。
「どうですか?そろそろ、お昼にしましょう」
「浅葱・・・。うん。まだ誰も来ていないよ」
「そうですか」
様子を見に来てくれた浅葱にお昼に誘われたので立ち上がる。
穏やかな笑顔。
本当に、優しさでできているような人だなぁ。
笑顔がとてもよく似合う。