「もし、誰かが来たらこれが契約書なのでここに手形をもらってください。とりあえずは、僕を呼んでくれたらいいので」



浅葱のお願いとは、黄泉屋書店の店番だった。
他にもやるべきことがたくさんあるらしい浅葱と暁は、いつも店先にいられるわけではないらしい。

だから、私が来た時もいなかったんだ。


それで私に白羽の矢が立った。



「はい・・・。でも、私でいいんでしょうか」

「大丈夫ですよ。この通り、しょっちゅう人が来るわけではありませんから」




ガランとした店内を見渡すと、浅葱は笑って言った。
そうかもしれないけど・・・。

考えてみれば、来るのはみんな幽霊ってことで・・・。
幽霊なんて、初めて見るんだもの。


いや、浅葱や暁も神様って言っても、似たようなものなのかも。
そもそも私が今、そんな感じなのだし。



深く考えてはだめね。



「では、僕は億で仕事をしていますから。何かあれば呼んでくださいね」

「はい」





浅葱が奥に引っ込み、私は店頭に残された。
静かな店内は、少し居心地が悪い。
慣れると、平気になるかしら。