浅葱が、私を受け入れられない理由。
それって、いったい。



「僕は、奏音さんに出会って、毎日がとても楽しく思えた。いつしか、奏音さんの事を特別に思うようになっていたんだ」

「浅葱・・・」

「でも、今は・・・。奏音さんだけを想う事が出来なくなってしまったから」



ギュウッと、浅葱の腕に力がこもる。
切ないくらいに苦しくなって。




「僕に、記憶が戻って・・・。思い出したことがあるんだ」

「思いだした事・・・?」

「僕には、妻と子どもがいた」




はっきりと告げられた言葉。
疑いようのない声に、私は息をのむ。




「といっても、まだ子どもは生まれていなかった。だから、この腕にその子を抱いたことは一度もない」

「浅葱・・・」

「でも、確かにいたんだ。僕が愛した人と、その人との間にできた子が。ずっと、ずっと忘れていたけれど」




私の瞳から、涙が一筋流れた。