「浅葱・・・。私、本当に何かを忘れてるの?」

「奏音さん・・・」

「わからない。自分が何かを忘れてるかどうかも、わからないの」


不安になる。
私がここにいる理由。

思い出せと言われた記憶は、私にはない。



忘れたものなんて、なにもないはずなのに。




「奏音さん。ごめんなさい。混乱させてしまったね。大丈夫だよ。大丈夫」

「浅葱・・・」




優しい手が、私の頭を撫でる。
浅葱の、優しい手。


落ち着く温もり。



浅葱。




ずっとこうしていてほしい。
浅葱にこうして触れられていたい。




私、やっぱり浅葱のこと―――――。