「それからは、妻には連絡を入れていたようだが俺は、全く取り合おうとはしなかった。でも、あいつは頑張ったみたいでな。劇団に入って、小さな役をもらえるようになっていたんだ」

「すごいじゃないですか」

「それでも俺は、素直に褒めてやることができなかった。次第に、テレビドラマのわき役に出るようになって。コツコツと頑張る姿を、見ていたのにな」




徳永さんの瞳が寂しげに揺れた。
後悔、してるんだ。
応援してあげられなかったこと。




「そしてあの日・・・。息子は30になって、ようやく家に顔を出した。10年ぶりくらいの息子だった。それなのに、俺は結局あいつを怒鳴り散らして追い出したんだ」

「徳永さん・・・」

「俺は、父親失格なんだ。息子を応援してやることもできん」




こんなに、本当は愛していたのに。
父として、大切に想っていたのに。

もどかしい。
悔しい。




「徳永さん、もしかして。亡くなってから息子さんの姿を見に行っていないんじゃないですか?」

「・・・なんだ、突然。いけるわけがないだろう。あんなひどく追い返しておいて」