「すぐに昇ることをためらう、それが心残りだからね」
「そっか。記憶を失くしていないってことは、ためらうことなく来たってことで・・・」
「そう。でも、ここに来たということは、強い心残りがあるという事だけど」
ゆめかさんに向き直り尋ねると、ゆめかさんは少し悲しげに頷いた。
「彼を・・・、立ち直らせてもらいたいんです」
「彼・・・?」
「私の、婚約者の池野浩太・・・」
唇を噛み、俯いてしまう。
次の瞬間には、ポタポタと涙の滴が落ちていく。
ゆめかさん・・・。
「ゆめかさん、これ」
「す、すみません」
ハンカチを差し出す。
ゆめかさんはハンカチで瞳を抑えながら深呼吸をして呼吸を落ち着かせる。
「ケンカをしてしまったの。些細なケンカ・・・。私は家を飛び出して、頭を冷やそうって思って・・・。その時に、事故にあって」


