そんな空気の中、いよいよ渡辺の入隊試験が始まった。審判役の総司の号令が下った次の瞬間、その試合は終了していた。隊士の胴に竹刀が当たっていた。一番組は隊の中でも実力者が集まる。その隊士を一瞬で打ち負かせる程の腕前なら、幹部と試合させるのも良いかも知れねえ。そう思った俺は、平助を指名した。
 平助は、幹部の中でも最年少。おまけに総司ともほぼ互角に戦える剣の腕も持つ。こいつはいい勝負になるかもしれねぇと思ってたが、渡辺は俺の期待をいい意味で裏切ってくれやがった。渡辺は平助の攻撃を鮮やかにかわして背後に回り込み、勝負を決めた。なら一か八か総司と試合をさせてみた。総司は剣を持つと、性格ががらりと変わる。その様子に、渡辺も若冠怯んだ。
 渡辺対総司の試合が始まった。2人共、竹刀の先端を相手に向けたまま攻撃の機会の伺っていたが、先に総司が仕掛けた。渡辺は必死に防戦に徹し、反撃をしようしたのと同時に総司がトドメの三段突きの構えに入った。その時、渡辺は急に何を考え付いたのか、女とは思えない程の脚のバネで総司の頭上を軽々と飛び越え、空中で方向転換して総司の肩に竹刀を当てて勝負を決めた。その後、気を失って倒れたしまったのだった