「美味しい…」

呟くような一言を聞いて、店員の女性は去っていった。

炭酸ジュースの泡はゴクッと飲み込んだ瞬間、チクチクと喉を刺していく。
甘酸っぱい味が口の中に広がるのは、きっとラムネが入っているせいだろう。

その効果もあって、泡は結構長く続いていた。
プチプチと弾けては消える泡の粒を見つめながら、時が止まった様な田舎の雰囲気を感じとっていた。


この止まった様な雰囲気を、止まっていないと感じていた時期があった。
その頃の方が、自分は間違いなくイキイキしていた。

無邪気に笑って、怒って、泣いて……喜怒哀楽に満ちた日々を送っていた……。


それがいつしか、苦しくなった。
もがいてもあがいても抜け出せない苦しさから、逃げ出したいと思うようになった。



…町から離れて生活したいと願った。
誰かに連れて行って欲しい…と心の底から望んだ。

そんな人と出会えたら、決して手を離さない……そう決めていたのに……



(現実は…上手くいかなかったわね……)


逃げていたのは6年ほど。


私は再び、この時の止まった町で暮らすことになったーーーー。