『Sea Wind』に戻ると、波留が言った通り、店内は賑やかなままだった。

「夕夏、どこ行っとったん⁉︎ 」

私がいないのに気づいていたのは、澄良くらいのものらしい。

「うん…ちょっと酔いざましに海を歩いとった。…あっ!澄良、ちょっと聞きたいことあるんやけど……」

「ん⁉︎ 何…?」

さっきの波留の態度がおかしかったから、澄良に尋ねてみた。

島の灯台は、誰かと上っちゃいけないのか…と。

「誰かとって言うか、カップルで上るんはやめといた方がええらしいよ。縁が切れるんやって。あの灯台、別名『縁切り灯台』と言われてるそうだから……」

「縁切り灯台⁉︎ 」

思わず大きな声を出した。
チラッと波留がこっちを睨む。焦った私は、慌てて口を押さえ込んだ。

「……なんでそんな縁起でもない名前ついとん?」

寄りによって嫌な名前。頭の片隅に、両親のことが過った。

「…あの灯台には女神様が居るって話知らん?鬼の岩と同じように、町内で語り継がれてる昔話なんやけど…」
「…知らんわ。聞いたこともない…」
「やったら町の図書館へ行って、昔話が載った本借りればいいよ。私も子供の頃読んだことあるけど、町内のいろんな場所に纏わる昔話がようけ載っとったよ!」

「本読むの、苦手なんやけど……」

マンガとは別。絵がないもん。

澄良に話して…と願った。でも、あんまりよく覚えてない…と言う。