勤めているAO機器の会社で、彼女は総務に居た。

 そして俺は営業課。有給の取り扱いやら何やらで彼女にはやたらとお世話になったから、よく話す女の子だった。

 歳も、1つ下。

 営業課故の出張の多さで、チケットの手配を頼むときに一度年齢の話が出て、それで判ったことだったけど。

 兼田都と言う名前で、テキパキと物事を処理する好感のもてる子だった。仕事も早かったし、よく気がつく子だったから、俺は実際何度も助けられていた。明るく笑う。だけどいつでも影があるというか、どこか暗い印象を持っているなあと思っていたんだった。

 当時は俺にも付き合っている彼女がいたし、兼田とは本当に気の合う同僚の仲で、たまーに飲みに言ったりもしていた。

 その彼女が、実は長期間に渡って広報部の部長と不倫をしていたと知ったのは、3年前の秋だった。

 最初に社内の噂で聞いた時、妙に納得したのを覚えている。

 ・・・ああ、それで、あの暗さかと。

 人に言えない恋愛をしていて、それ故の破れかぶれ的なところがあったんだな、と。

 相手の部長は社内でも有名な出世株で、美形で、不倫が出来るくらいの要領の良さと収入があった。だけれども、社内でも女性社員の憧れの的である有名なその彼が不倫相手に選んだのがどちらかと言えば地味な兼田だったから、皆驚いていたんだ。

 え?総務の?誰って??って、女子社員が騒いでいた。

 不倫が終わった原因は奥さんにバレたことで、嫉妬の嵐のようになったらしい奥さんは、最終手段に出たのだ。

 自分のダンナとその部下の不倫を調べつくし、それを細かく書いて会社中の部にファックスとメールと電話で公開したのだ。

 一夜にして、兼田都は人の夫を寝取った悪女になった。