淋しがりやの心が泣いた

 私がじっと見てしまったせいだろうか。央介くんと一瞬視線がぶつかった。
 彼も私に気が付いて、ふわりといつもの笑みを返してきた。
 そしてすぐに、私の元へと歩み寄ってくる。

「南ちゃん、いつ来たの? 気づかなかった」

「今来た。忙しそうだね」

 央介くんは疲れているのか、笑顔が少し曇っている。
 お客さんが増えた今、お店が忙しくて人手不足なのは明白だ。
 ほかにも何人かスタッフはいるけれど、どうにも手が回らないみたい。

「食べるもの、決まった?」

 マスターから手渡されたメニューに視線を落としていると、央介くんが向かい側から同じようにそれを覗き込む。

「どれにしようかなぁ。お腹すいてるんだ」

「最近人気なのは、マスターが勧めてるのもあるんだけど、これとか……」

 彼がメニュー表を指さしたちょうどそのときだった。
「央介く~ん!」と、先ほどの女性客三人組から呼び戻すような声がかかる。

 そちらの女性たちに会釈と笑みを返す央介くんは、私のほうに顔の向きを戻すとその表情は苦笑いに変わっていた。