今になっても私はあの時和也が何を考え、何を思っていたのか分からない。

いや。分かろうとは思ってはいないのかも知れない。

だって私があの日自分で引き取ると決めて、でもあまり干渉しないと決めたから。

でも…それでも…和也からの別れの言葉がなかったなんて思うのは…我が儘なのだろうか。

和也にとって私と過ごした時間がどのようなものなのかはわからない。

でも、それでも最後にきちんと目を見ていってらっしゃいといってあげたかった。

だから、きちんと和也と向き合えば良かったなんて今更思ってる。


『…ほんと…もう…遅いのにね…』

自嘲気味にそう呟くと、まだ冷たさの残る風が嘲笑うかのように私の冷えた瞳をさらに冷え固めるように吹いていった。